妻も日々、試されている。
◇
少し前の土曜日、授業参観があった。
そのため、2日後の月曜日は学校が休みになってしまった。
経済的には嫌な予感しかしない。
一時は学童保育に預けるという案もあった。
妻は骨休めできるし、予定外のことは起こりにくい。
とにかく出社しないと給料がもらえない私としては、この選択が一番ありがたい。
しかし妻が「体調的にいける」というので、池袋のサンシャイン水族館で暇をつぶし、その後水泳の練習へ行くということになった。
息子を目いっぱい満たしてやりたい。
そういう思いが、妻を奮い立たせるのだろう。
◇
「池袋駅の構造が分からん」とキレ気味の電話が来たりもしたが、午前中はおおむね平穏であった。
とーこーろーが。
ふりかけご飯の弁当を消化し終えた私に電話がかかってきた。
予想を超えた、ショッキングな内容であった。
一つ、昼食の鮨が1万4千円。
一つ、息子は水泳に行かないと主張。
もうね。
息子は最近、水泳をよくサボる。
その結果、先日の試合ではメドレーの順番を間違えて失格、という体たらく。
この一件で心を入れ替えるだろうと考えるのは、所詮は大人の発想ということか。
鮨については詳細不明だが、好物をアラカルトで攻めたに違いない。
西武百貨店の鮨屋、侮れない価格である。
◇
そして2時間後、また電話がかかってきた。
妻が体調不良だそうである。途中で迎えに来てほしいとのこと。
いつもの育児介護コンボだ。
「15分前ぐらいに水族館に入ったばっかりだから、頑張って一通りは見るけど」
「15分前? 遅くない?」
「ロッテリアで食べてたから」
息子の食いっぷりに恐れをなした妻が、腹六分目で鮨を切り上げさせ、足りない分をロッテリアで補ったということらしい。
何ツアーですか今日は。
◇
さらに1時間後、再び電話である。
息子が炭酸飲料を全身に浴びたという。
着替えはズボンとパンツしかないとのこと。
体調不良をおして息子に付き合った結果がこれか。
潔癖症の息子はベトベトのシャツに堪えられないだろうと思いきや、今すぐ帰りたいとは言わないらしい。
「お母さんの具合が悪いから、今すぐ帰れ」
電話を代わらせ、息子に直接言った。
それでも一応お土産は買い、水泳にギリギリ間に合う時刻に水族館を出る、と妻は言った。
◇
その30分後。
「今、出ました」という電話かと思いきや、また想像の斜め上を行く内容だった。
息子がどうしてもペンギンを見たいというので、見てから帰るとのこと。
これで水泳は絶望的となった。
「もう疲れた」
妻の声がどんどん沈んでいく。
それでも息子の願いを叶えようとする妻。
愛情の限界を試そうとするかのような息子。
そして間接的に試される私。
◇
結局、私は16時半に会社を早退して合流し、水泳に行かず帰宅することになった。
帰るやいなや工作を始める息子。
一日試され続けた妻は、酒をあおって早々に寝てしまった。
今日という日が、息子にとって何かを残してくれれば。
もはや、願うことはそれしかない。
明日は水泳行くんだろうな!